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自閉スペクトラム症の理解のために2

1.はじめに

 自閉スペクトラム症は、自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群などいろいろな名称で呼ばれていた名称を、まとめて表現しています。
 当塾では障害名は使わず、100人いれば100通りの特徴があるととらえています。したがって自閉スペクトラム症という言葉は指導に使いませんが、今回は説明のために使います。
 また、ここでは自閉スペクトラム症の正確な特徴をまとめてあるのではありません。自閉スペクトラム症を詳しく知りたい方は専門書をお読みください。
 ここではあくまで、なぜそうなるのか、そして周囲の人達がどのように考えどのように接すればよいのかについての私見を紹介いたします。自分の子どもに該当する箇所から保護者の皆さまの何らかの気づきになることがあれば幸いです。

2.感覚刺激への弱さ

 自閉スペクトラム症が、家の外を大きな音でバイクが通ったり、救急車が通ったり、ヘリコプターが飛んでいたりすると、窓際に立って見ていることがよくあります。また大声を出す人がいると極端にうるさいと感じたり、スーパーのようなざわざわしている所に行ったあとは落ち着きがなかったりすることもあります。テレビゲームを長時間やった後、ずっとその世界の中にいたり、コマーシャルにはまり込んだりすることもあります。
 自閉スペクトラム症でなくとも誰でも少なからずあることで、雷の音が嫌だったり、黒板とチョークのこすれる音が嫌だったりすることもありますし、好きな音楽が頭から離れなくなっていつの間にか鼻唄で歌っていることもあります。スーパーで走り回っている子どもも珍しくありません。
 しかし、自閉スペクトラム症は明らかに感覚刺激に対して反応する頻度が高く、過敏とも言えるほどです。
 そこで、なぜ感覚刺激に対して頻繁に反応するのか、そして周りの人達はどのような配慮をした方がよいのかについて考えてみましょう。
 
 まずは次の4つの視点から見ていきます。
(1) コミュニケーション力の低さによって、外界からの刺激を
予測できない
(2) コミュニケーション力の低さによって、外界からの情報の
優先順位をつける力が弱い
(3) 感覚刺激に過敏に反応する
(4) 過去に受けた感覚刺激が必要のない時にも出てくる
(1)コミュニケーション力の低さによって、外界からの刺激を予測できない
 「わ!!」と後ろから驚かされて、心臓が飛び出しそうなほどびっくりしたことがありませんか。まったく予期しなかったことは本当に驚きます。しかし誰かが誰かを驚かしている様子を見ても驚きません。また「これから驚かすよ」と言われて「わ!!」と言われても、驚くことはありません。これは人の行動を予測することができるからです。
 夜中にし~んとしている時、風で戸が「コトッ」と音がしてひやっとしたことはありませんか。車に後ろで突然クラクションを鳴らされて驚いたことはありませんか。
 このように人は予期しなかった音がすると、それが大きな音でなくても驚きます。ですから、その環境を把握し、そこで何があるかを予測しようとします。たとえば部屋にいるときはドアから誰かが入ってくるかもしれないと心のどこかで予測していますし、人が後ろにいるときは話しかけられるかもしれないとか、後ろを歩くかもしれないというような予測をしています。車で走っている時は、前の車がブレーキを踏むかもしれないとか、交差点で横から車が出てくるかもしれないという予測をしています。
 テレビをつけた時は音が出ると思っています。電話は鳴るものだと思っていますし、授業が始まる時は先生が入ってくると思っています。このような予測はすべて人や物の動きの予測をしているのであり、特に人の動きの予測は人とのコミュニケーション力が高いほど予測することができ、低いほど予測することができません。人の考えを理解できるからこそ人がどう動くかを理解することができ、先の予測もすることができます。
 誰でも予測が外れると驚きます。ドアから入ってくるはずのない人が入ってきた時、テレビをつけたら思っていたより大きな音が出てきた時、車が突然飛び出してきた時、仕事をしていたら社長が後ろに立っていた時、駅で電車のドアが開いたら、いるはずのない友人が立っていた時、突然人が笑い始めた時など、予測がつかないことが起これば驚かされます。
 自閉スペクトラム症の場合は人の考えを理解する力が弱いために、行動予測ができません。そのために周りで起こる出来事に驚かされることがよくあるのです。誰でも予測していないことがあれば驚くように、自閉スペクトラム症は予測できないことが多いだけ驚かされることも多くなります。結果的に声の大きい人をきらったり、ざわざわしている部屋にいると調子が悪くなったり、特定のスーパーには行きたがらなかったりします。
 ですから周囲の人は、突然大きな音を立てたり、集中して何かをしているそばでテレビを見たりして苛立たせるようなことにならないように気をつけ、穏やかな環境にいられるよう配慮し続ける必要があります。
(2)コミュニケーション力の低さによって、外界からの情報の優先順位をつける力が弱い
 人は鼓膜を揺らす音はすべて聞こえていますが、実際に意識しているのはその中のごく一部です。聞きたい音、聞くべき音を選択しているからです。勉強している時や人と話している時に、外から車が走る音が聞こえても、車が自分に関係しない時は無意識的にその音を除外します。つまり耳に届いていても意識しないのです。視覚や聴覚など五感を通して入ってくる山のようにたくさんの情報は、優先的に意識されるものとそうでないものに分けられます。人と話している時は相手の声が優先され、他の音は意識されないようになります。この能力があるからこそ、何かに集中していることができるのです。
一方自閉スペクトラム症は、五感を通して入ってくる情報の中から優先する情報を選別することがうまくできないために、他の人から見て優先してほしいものを優先しない傾向があります。
自閉スペクトラム症とAさんが話をしている時にヘリコプターが飛んで来ている音がしました。その子はAさんとの話が途中であっても、窓のそばへ行きヘリコプターを探します。Aさんとしては話を優先してほしいのですが、Aさんの声とヘリコプターの音ではヘリコプターの音の方が優先されてしましました。
 ほとんどの人は、人と話をしているとそちらに集中して、他の音が入ってきてもそれを無視するか、優先順位の低いものとして気に留めないようにします。ヘリコプターの音がしても、目の前にいる人との話の方が重要であるとか、ヘリコプターが飛んでいるけど見てもしょうがないといった判断も行われます。もちろんじっくり考えてそう判断するわけではなく、むしろ無意識的に判断しているので実感はあまりないかもしれません。しかし周りがザワザワしている喫茶店で、目の前に座っている人の話の内容だけ聞いている自分に気づいたことがある人は多いと思います。
 自閉スペクトラム症は、目の前で話している人が、自分の話を聞いてほしいとか、そのあとで何か同意するような返事をしてほしいといった気持を持っていることを読み取る力が弱いため、目の前にいる人の声以外の音にも気をとられがちです。人が話したことに対しても「うなずく」とか「そうだね」「へえ~っ」といった返事をするとか、にこっと笑うといった反応を示さないこともあります。
 話をしている相手が同意を求めていることを読み取ってうなずく、相手が話を聞いてほしいと思っているようなので体を相手に向ける、悩んでいるようなので慰めの言葉を言う、このような行動は相手の気持を読み取ってこそできる行動です。
 このような行動こそ自閉スペクトラム症の苦手とするところです。そして目の前にいる人の話だけでなく、その他の音にも気をとられ、話をしている人が優先してほしい音を優先しないことがあるのです。
 話をしている人にとっては、自閉スペクトラム症は「人の話を聞かない」「返事をしない」「人の目を見ない」といった行動に見えます。しかしこれは自閉スペクトラム症が人を無視しているのではなく、相手の気持を読み取る力、つまりコミュニケーション力が弱いために、目の前で話している人以外の音などに気をとられてしまうことが、その理由の一つなのです。
(3)感覚刺激に過敏に反応する
 情報の優先順位は、コミュニケーション力によって判断されると言っても過言ではありません。しかし、感覚自体が過敏になっていることも、優先順位づけがうまくいかず感覚刺激にひんぱんに反応する理由として考慮していかなければなりません。
 外界からの情報に対して過敏になるのは誰しもあることです。寝る時に時計のカチカチいう音が気になる、テレビを見ているとそばで話している人の声が邪魔になる、喫茶店でテレビと有線放送が一緒についているとイライラする、人がたくさんいるデパートのざわざわした音に疲れてしまう、テレビアニメの色使いの激しさに耐えられないなど、特別な理由は思い当たらないけれど、強く刺激されてしまうことは誰でも一つはあります。他にも、肌着は綿でないと気になる、2階の足音が気になる、エアコンの音がうるさい、暗闇がこわい、雷の音に怯える、といったこともそうですし、アレルギー性鼻炎なども広い意味では入るでしょう。自閉スペクトラム症の中には、その割合が非常に高いように見える子がいます。強く刺激を受ける理由として、コミュニケーション力が低いためなのか、過敏なのかを明確に区別するのは困難ですが、音を気にする子でもゲームをしている時は極端に高い集中力を示すこともあり、やはり多くの場合はコミュニケーション力不足によるものであって、それが起因して刺激に過敏になっていると思われます。
 健常児は外界からの刺激に気をとられても人とのコミュニケーションにできる限り力を注ごうとします。かぜをひいてぼ~っとしている時は人への意識が低下しますが、学校を休むほどでなければ、ある程度は普通の生活が送れます。しかし自閉スペクトラム症は、外界から強い刺激が入ると、人のことよりも刺激の方に気をとられてしまいます。
 感覚自体が過敏であることが、生来のものなのか、のちの体験によってなったのかは人によって違いますが、いずれにしても何らかの配慮や対応が必要となります。
 では、その対応策を考えてみましょう。
スーパーに買い物に行く時、スーパーのギラギラした光や色が苦手でサングラスをして行く人や、ザワザワした音がいやでヘッドホンをして音楽を聴きながら行く人もいます。一方、自閉スペクトラム症の場合は周りの人が見つけ出してあげなければならないことの方が多いでしょう。何に対して刺激を強く受けるのかはっきりしている場合は、それを取り除けばいいのですが、実際にはそれほど簡単に原因を特定できるとは限りません。複数の原因がある場合もあれば、音全般に気をとられるような場合もあり、特定の原因を取り除くというよりも、生活全体を刺激の少ないおだやかな環境にしてあげる方がよいと思われます。
 まず初めに物を少なくすることです。物が多いとそれだけで目がチラチラしたり、いろんなものに気をとられたりして、落ち着きのなさを増長します。最低限の必要な物だけにして、あとは押入れなどの見えないところにしまいます。当塾では必要最小限の物だけにして、生徒が集中できるようにしています。そして必要な物だけに厳選して数を減らしていけばいくほど、生徒の集中力が高まり落ち着きが出てくることを実際に体験することができました。
 具体的な例を一つ示します。
 子ども用の部屋を1つ作ることができるとします。部屋の広さは狭い方がいいでしょう。1人なら3畳から4畳半もあれば十分です。あまり広すぎると落ち着きません。大人と子どもは体の大きさが違いますから、広さに対する感覚も違います。大人が少し狭いと感じるくらいが、子どもにとっては落ち着きます。広い部屋しか空いていなければ、カーテンで仕切ってもいいかもしれません。
 物はとにかく何もないと言えるくらい少なくします。引越しするのかなと勘違いするくらいがいいと思います。カーテン、1つの机、クッションが2~3こ、ゴミ箱が1つ、という家具に、親としてやらせたいと思う教材を5つ以下に厳選して置きます。5つの教材は1つのかごに片付けるようにします。
 テレビは置きません。テレビを見たいときはテレビの部屋に行きます。「ながら」を避けるためです。
 5つの教材を何にするかはその子によって違うでしょうし、親の教育方針によっても違うでしょう。
 完成しているものを動かして遊ぶよりは自分で組み立てて遊ぶものの方がいいでしょう。またキャラクターものは小学校2~3年までは極力避けたいものです。またキャラクターのついている服がかわいいから買ってあげようと思うかもしれませんが、かわいいのは子ども本人です。本人が引き立つような服や家具にしたいものです。
 勉強関係のもの(机、下じき、鉛筆など)は、高学年になってもキャラクターは避けるべきです。キャラクターに気をとられて勉強に集中できないような環境を作ってはいけません。集中できないのは本人のせいとは限らないのです。買い与える人も十分な配慮が必要です。
そして絵を描く、折り紙をする、粘土で何かを作る、空き箱で何かを作る、ビーズで遊ぶ、など創造性を高め、心おだやかに集中できる活動をさせてあげましょう。
(4)過去に受けた感覚刺激が必要のない時にも出てくる
 自閉スペクトラム症がぶつぶつと独り言を言っていることがよくあります。プリントをやるよりも楽しいことを考えていたい、独り言を言うことを人がどう思うか分からない、何を言っているのか分からない大人の言うことを聞いているよりも物思いにふけっていたい、おととい見た楽しいコマーシャルのことを思い出して楽しい気持ちに浸りたい、人から言われた言葉を何度か復唱して納得したいなど、これにはいろんな理由が考えられますが、本人の意識とは関係なく、頭に思い浮かんでそれを言っているような時も見受けられます。
 何かに集中している時にも、集中していることにまったく関係のないことをぶつぶつ言っている時は、自然と頭に何かが浮かんできてしまっているようです。
 はっきりとした理由は分かりませんが、過去に受けた感覚刺激の中で強いものが出てきやすいという傾向は、はっきりと見受けられます。
 たとえばコマーシャル。本人に強烈に印象づけられたコマーシャルは、時と場所を選ばずその子の頭の中に浮かんできて、独り言を言うことがあり、コマーシャルに限らず、テレビの一場面を反復する子は珍しくありません。
 さらに誰かに強く叱られた時の言葉、学校で反復練習している音読など、必ずしも大きな音ではありませんが、強く印象づけられた音が独り言で反復されます。
 独り言の問題点の一つは、落ち着きがない時ほど独り言が多い傾向があることです。逆に言うと、独り言が多い時は、落ち着きを失いかけている時であり、様々な問題が二次的に起こりやすい状況にあるということです。
 周りのことが見えていないので、自己中心的な行動になりやすかったり、人とぶつかったりつまずいたりすることも増えます。当塾でも独り言が多い時は勉強の進み具合が遅くなります。また独り言を言うこと自体、居合わせた人に不思議に思われたり、静かにしなければならない場所で、人に迷惑をかけてしまうなどの問題があります。
 したがって、あまり強烈な感覚刺激を与えないよう注意する必要があります。
 できるだけ静かな部屋でおだやかに過ごす。テレビを見る時は小さめの音で、短い時間で。独り言で言うようになったものは次回から避ける。ながらをしない。スーパーなどのざわざわした所はできるだけ避ける。テレビがついていてしかも有線がかかっているような喫茶店には行かない。etc…..
 感覚を強烈に刺激するようなことがないように気をつけることで、落ち着きを取り戻し、独り言も少なくなってくるはずです。
 結果的に周りの環境に注意を払う力や、人の様子を見る力も向上し、コミュニケーション力が向上します。
 つまり、独り言を言っている状況は、心ここにあらずの状態であり、周りの人から見ればその場面に不適切な行動をとり、こちらからの発信にも受け答えをしない人に見える状態であるということです。
 独り言は自閉スペクトラム症の特徴として、ある程度許容してあげることも必要ですが、自閉傾向を軽減するために強い感覚刺激をなくせるような環境を作り、その中で落ち着いて過ごせるよう配慮していくことが大切です。

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