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自閉スペクトラム症の理解のために3

自閉スペクトラム症の理解のために2のつづきです。

1.はじめに

 自閉スペクトラム症は、自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群などいろいろな名称で呼ばれていた名称を、まとめて表現しています。
 当塾では障害名は使わず、100人いれば100通りの特徴があるととらえています。したがって自閉スペクトラム症という言葉は指導に使いませんが、今回は説明のために使います。
 また、ここでは自閉スペクトラム症の正確な特徴をまとめてあるのではありません。自閉スペクトラム症を詳しく知りたい方は専門書をお読みください。
 ここではあくまで、なぜそうなるのか、そして周囲の人達がどのように考えどのように接すればよいのかについての私見を紹介いたします。自分の子どもに該当する箇所から保護者の皆さまの何らかの気づきになることがあれば幸いです。

2.自閉スペクトラム症は奇妙なこだわりをもっているのか

 自閉スペクトラム症の特徴として「奇妙なこだわり」という表現をよく耳にします。自閉症の専門的な判断基準としては「強くて限られた興味」とか「行動、興味および活動の限定され、反復的で常同的な様式」といった表現になっています。
 確かに、なぜこんなことにこだわるのだろうかと思えるようなことにこだわっていることがあります。
 順番にこだわる、曜日にこだわる、電車にこだわる、人数にこだわる、並べ方にこだわる、トイレにこだわる、同じ質問にこだわる、数字にこだわる、通る道にこだわるなど、だれでも一つや二つはこだわりがあるけれども、自閉スペクトラム症のこだわりの多さやわけの分からないこだわりに周りの人が困惑することがしばしばあります。
 結論から言うと、「自閉スペクトラム症はコミュニケーション力が低く、人がどう思うか分からずに自分の思いを押し通そうとしたり、人と楽しむことなく自分だけで何かを繰り返し楽しんだりするために、人からなぜこんなことにこだわっているのかと思われてしまう」ということなのです。
 では詳しく考えていくことにしましょう。

3.人を対象としないことによる奇妙なこだわり

 自閉スペクトラム症はものへのこだわりが強いように見えることがあります。同じパズルを毎日する、ボールペンだけを集める、人形を集めて並べる、電車をずっとながめているなど、人によってこだわることがらは違うものの、人とは関係なくこだわっていることが多いようです。
 数年前、自閉傾向を持つ生徒が、社会の白地図を作成するときに東海道線を何も見ずに書き込んでいたことがありました。その他の路線も書き込んで、驚かされたことがあります。この生徒は路線図を見るのが好きで、電車へのこだわりがあります。他にも驚かされたことは何度かありますし、たくさんのすごいマニアックな自閉スペクトラム症がいることも知っています。
 しかしこだわりの強さは自閉スペクトラム症の特徴とは言い難く、健常者にもこだわりの強い人はたくさんいます。
 ボールペンや電車に興味を持つことにまったく不思議はなく、SLファンや文房具のマニアはどこにでもいます。わざわざ旅行してSLの写真をとったり情報を集めたりする人もいますし、文房具だけで数フロアある銀座の文房具店に毎週通う人や、文房具の一部を見るだけでメーカーと商品名を言える人もいます。この人たちは「ファン」や「マニア」、時には「カルト」という言葉で呼ばれています。
 クイズ番組にもカルトと呼ばれる人はよく出てきます。その詳しさは一般の人は知らないようなことばかりで、ある歌手の熱狂的なファンであれば本人よりも詳しく答えられる人もいるくらいです。魚やお菓子の詳しさなど、プロ・アマ問わずものすごい人たちがいます。
 ではこのマニアやカルトとこだわりの強い自閉スペクトラム症との違いは何でしょうか。
健常者と自閉スペクトラム症の一番大きな違いは、人とのコミュニケーションを前提にしているかどうかです。「ファン」「マニア」「カルト」と呼ばれる人たちは、1人だけの楽しみよりも同じ好みを持つ人とのコミュニケーションを前提にしているのです。
 一方自閉スペクトラム症はコミュニケーション力が低く、人とのコミュニケーションを通して楽しみを共有することが困難です。そのために自分だけで楽しむ傾向が強く、人から見ると「なんであんなことに一所懸命なんだろう」と思われることがあるのです。
 健常者の中にも1人だけで楽しんだり、マニアであることを隠している人もいますが、同じ趣味を持った人の前では態度がまったく違います。
子どもたちもカードを何十枚も集めれば、友人と見せたり交換したりする楽しみがあります。集めるだけでも楽しさを感じるでしょうが、やはり友人と遊ぶことを求めています。
 自閉スペクトラム症は人とコミュニケーションをとって楽しみを共有することが少なく、もの自体への興味だけに見えるために、奇妙なこだわりに映るのです。

4.状況を理解できないことによる奇妙なこだわり

 いつも同じ道を通って出勤することにこだわりのある人はどこにでもいます。しかし途中で工事をしているので迂回しなければならなくなった時に、座り込んで動かなくなる人はあまりいません。自閉スペクトラム症の中には、いつもと違う道を通っただけで座り込んで動かなくなってしまう子がいるので、奇妙に思われてしまいます。これは工事中というやむをえない状況の変化を理解しきれない(納得しきれない)ために、いつもと同じ道を通ろうと主張することによっています。
 人数にこだわる人もどこにでもいます。縁起のいい数にしたいといった理由ですが、7がラッキー7でいいという人もいれば、八が末広がりでいいという人もいます。しかし、誰かが友人を1人連れてきたために、自分が思っていた数より1人増えてしまったからといって、どうして連れてきたのといって泣きそうになる人はあまりいません。自閉スペクトラム症の中には、人数が予定と違うと気になってしかたがない人がいます。当塾にも誰かが休むと○○くんは?と何度も聞く子がいます。これは、人が自分の予想と違う行動をとるという状況の変化を理解しきれないことによります。
 これらの状況の変化は人が作り出すものです。自閉スペクトラム症は人の考えを推測するのが苦手なので、人がなぜこの状況を作り出したかを理解できません。自閉スペクトラム症が奇妙なこだわりを持つのは、コミュニケーション力が低いために、人が変化させた状況に合わせて自分を変化させることができないことによっています。

5.こだわりをあきらめられない理由

 しばしばこだわりを小さくして人にゆずらなければならなくなることがあります。健常者の場合はうまくそれなりに切り抜けていきますが、自閉スペクトラム症の場合はそうはいきません。
こだわっていることをあきらめなければならない状況になった時、こだわりを持つ本人があきらめようと思うのがベストです。周りの人もそのような方向にもっていこうとするでしょう。
 ところが自閉スペクトラム症の場合、大きな問題がいくつかあります。まず一つ目は「あきらめなければならない状況」というものを認識する力が弱いことです。あきらめなければならないと感じるには、その状況に関係する人たちの考えを推察できなければなりません。きっとみんなはやらない方がいいと思っているからやめておこう、などと考えることができなければならないということです。
 レストランに行ったとしましょう。みんな静かに話し、バタバタと歩いたりしません。しかしどこにもそうするようには書いていません。なのにレストランに入った時からその場の雰囲気を感じてみんなそうします。夜の宴会では人の声が聞こえないほど騒がしく、また誰もそれをとがめることはありません。レストランは静かにしますが、ファミリーレストランならば少し声が大きくても大丈夫な気がします。そのことはどこにも書いてありません。ファーストフードのお店はどうでしょうか。ラーメン屋とうどん屋はどうでしょう。店の種類ごとに声の大きさを教えることはありませんから、その場を判断して行動することになります。
 また幼児期にはお店でもどこでも関係なく泣き、歩けるようになればどこでも自由に歩き回ります。その場の状況判断はできません。しかし年齢が上がるごとに、以前の経験や一緒に行った親の行動をもとに自分のするべき行動を判断したりするのです。
 自閉スペクトラム症はコミュニケーション力が弱く、そこにいる人の意図を読み取る力が弱いために、その場でどのように行動すべきかを理解できません。幼児と同じくらい未熟なのです。
 インテリアや照明、机の配置にも人の意図が示されています。そして店員の出迎え方や表情にもお客としてどのように行動してほしいかが表れており、それをお客は感じ取りながら行動していきます。自閉スペクトラム症にはそれがなかなか読み取れないので、その場に不適切な行動をとってしまうことがあるのです。
 ですから周りの人が「あきらめなければならない」と感じた時にも、自閉傾向時はなぜあきらめなければならないかが理解できないことがあるのです。なぜあきらめなければならないかが分からなければ、こだわりが残ります。これが、自閉スペクトラム症がなぜここまでこだわるのだろうかと不思議になる理由の一つです。

6.どのように指導したらよいか

 こだわりへの抜本的な解決策は、コミュニケーション力を向上させることです。コミュニケーション力が向上すれば、こだわりが人を対象にした楽しみとなり、回りの状況を理解してこだわりをあきらめることができるようになります。
文房具へのこだわりが強い子がいるとします。文房具を集めているからといって自閉スペクトラム症の特長とは言えません。気をつけなくてはならないのは、自閉スペクトラム症が物にばかりこだわって人を見なくなることです。ボールペンを集めて並べて楽しむことに時間を費やし、人と楽しむ時間がないようでは、コミュニケーション力が向上しません。ですから物や事柄へのこだわりも大切にしながら、それ以上に人に興味を持つように指導することが大切です。ボールペンと楽しむ時間よりも楽しい時間が人との間にあればいいのです。
 そのためにはまず物を減らすところから始めましょう。物が多いと物へのこだわりも多くなります。物が少ないと楽しみを探して人への興味が向上します。
一つの例で考えて見ましょう。ある部屋には4つの物(机、いす、ノート、ペン)と一人の大人がいます。また別の部屋には20の物(机、いす、テレビ、ゲーム、パズル、人形、本など)と一人の大人がいます。さてどちらの部屋の大人が自閉スペクトラム症の興味を引くでしょうか。それは簡単です。物が少ない部屋の大人の方が興味を引きます。物が多い部屋では大人が一番興味をひくとは限りません。人は複雑な言葉をしゃべる難解な存在ですから、簡単に楽しめるものへの興味が優先します。物へのこだわりを少なくするためには、物を減らし人への興味を増やしていくことが最初のステップとなります。
そして大人は短く分かりやすい言葉を使いましょう。くだけた言葉よりもニュースを読むような文の方が伝わります。伝わると簡単にあきらめてくれることがよくあります。
たとえば他の子が使っている赤の色鉛筆をどうしても使いたくて奪い取ろうとする自閉スペクトラム症がいたとします。「だめでしょう、お友達が使っているんだから。使い終わるまで待ちなさい。お友達が今使いたいんだからね。」といった表現ではなかなかあきらめません。むしろ「もう少し待ってください。」または「○○ちゃんの次です。」のような短くて具体的な行動を伝える方が分かってくれます。もっとはっきり伝える場合は「もう少し待ってください。いいですか?」と聞くと、かなり高い確率で「いいですよ」と言ってくれます。
これは、大人があきらめさせようとするときに、あわててしまって長くて理解しにくい言葉を大きな声でしゃべるために、自閉スペクトラム症にはあきらめなければならないことが伝わらないということでもあります。冷静にそして短い文で語尾を正確に話すと伝わります。
こだわっていることをあきらめなければならない状況になった時、こだわりを持つ本人があきらめようと思うのがベストです。周りの人は自閉スペクトラム症を冷静によく観察し、なぜそうしたいのかを見抜きましょう。見抜くのはたいへん困難なことですが、その子その子のパターンを理解すれば対策も思い浮かびます。
 こだわりは誰にでもあるものですから障害と思わずに普通のこととしてとらえるのが基本です。そしてコミュニケーション力を向上させることで、人とこだわりを共有できるようになってほしいものです。そうすることで奇妙なこだわりではなく、楽しい趣味となるでしょう。

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