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自閉スペクトラム症の理解のために4

1.はじめに

 自閉スペクトラム症は、自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群などいろいろな名称で呼ばれていた名称を、まとめて表現しています。
 当塾では障害名は使わず、100人いれば100通りの特徴があるととらえています。したがって自閉スペクトラム症という言葉は指導に使いませんが、今回は説明のために使います。
 また、ここでは自閉スペクトラム症の正確な特徴をまとめてあるのではありません。自閉スペクトラム症を詳しく知りたい方は専門書をお読みください。
 ここではあくまで、なぜそうなるのか、そして周囲の人達がどのように考えどのように接すればよいのかについての私見を紹介いたします。自分の子どもに該当する箇所から保護者の皆さまの何らかの気づきになることがあれば幸いです。

2.自閉スペクトラム症とのコミュニケーションの仕方

 公園から幼児の大きな泣き声がして、そのあと親の小さな声がします。どうやらその幼児は砂遊びの途中で母親に帰ろうと言われましたが、どうしてもまだ遊びたいようです。
 こんな時、小学生くらいの年齢ならば、
子「え~!なんで~?」
母「2時から○○へ行かなきゃいけないの。だから帰ろう。」
子「そうなの。」
と言って、不満そうではあっても母親に合わせて帰ります。今できなくてもまた今度やればいいし、帰らないという選択肢はなさそうだと考えることができるからです。
 でも幼児はなぜ帰らなければならないのか分かりません。とにかく今、自分がどのくらい遊びたいかを主張するしかないので全力で叫びます。当然周りのことなど考えませんし、強く主張しすぎた時の自分にはねかえる不利益も分かりません。ですから、とにかく今の自分の気持ちを訴えかけることに最大限の努力を払います。砂遊びを通して様々なことを発見する喜び、何かを形作る喜び、体を動かす喜びなど、途中であきらめることのできない学ぶ喜びを感じているのでしょう。
 しかしそれを言葉にすることはできません。ただ「ぐわ~!やりたい!おかあさん!」と叫び、なんとか母親に分からせようと努力します。
 親としては遊ばせてやりたいと思う反面、どうしても帰らなければならない事情を無視するわけにもいかず、なんとか子どもを納得させようとします。
 ところがどんな理由を言っても子どもに分かる様子はなく、最後は強引に連れて帰ろうとします。
 それでも子どもは抵抗するので、母親は我慢しきれなくなります。
 「しかたがないでしょ。御用があるんだから」と言い、周りの人達にも自分がしかたなく連れて帰ろうとしていることを暗に伝えながら、早くこの場から立ち去ろうとします。
 幼児への対応方法としては、話して分かるとは限らないので、無理やり連れて帰ることに問題はないと思います。
 先日は親子2組が通りかかり、こんな会話でした。
子A 「公園で遊びた~い!」
Aの母「もうすぐ昼よ。お昼ごはんを食べなきゃ」
子どもはどうしても遊びたそうで動きません。
Aの母「あと3分で12時になるよ」
子B 「え~?もうそうなの」
 一緒にいた子BはAの母の言うことを聞いて帰ろうとします。幼稚園児が「あと3分」という言葉で分かったかどうかは分かりませんが、12時はお昼を食べる時間だということと、Aの母の口調でもうすぐだということに気づいたのでしょう。しかし子Aの方は帰ろうとしません。
 子Aだけが取り残されて、他の3人は10mほど先を行きます。
Aの母「もういかなきゃ。お昼だからね。おなかすいたでしょ。」
でも子Aは公園のフェンスにもたれてゆっくり、ゆっくり歩きます。この歩く様子に、母親に対して譲歩しながらもなんとかならないの?という問いかけが見られます。
 なかなか歩かない子Aの様子から、だんだん母親の口調が変わってきて、
Aの母「のろい!のろいよ。いつも」
と爆発し始めました。そしてAの母はBの母にこう言いました。
Aの母「こういう言い方をしてはいけないと思うんだけどね。自分でも考えるんだけど。」
 こうしたやりとりから、そこにいる自分以外の人の様子を見ながら、その場がうまくいくように調整を図っていることが分かります。幼稚園児であっても、完全に抵抗するのではなく、ゆっくり歩くという相手の譲歩を促すような行動をとっています。
 Aの母もついに怒ってしまいましたが、自分の子Aだけならもう少し待てても、他の家族も待たせるわけにはいかないという考えや、子Bは聞き分けがいいのに自分の子Aが言うことを聞かないことへの苛立ちなどが、このような発言をさせたのでしょう。
 一方自閉スペクトラム症の場合は、相手の気持を推察する力が弱いので、なかなかやりとりになりません。
 自閉傾向のある子Cが母親と公園の前を通りかかります。子Cは何も言わずに公園に走り出しました。
Cの母「○○くん。もう遅いから公園はだめよ」
子Cの耳にはCの母の声が届いていますが、反応がないのでまるで聞いていないように見えます。周りを気にしない様子は、それまで公園で遊んでいた周りの数人の子どもの注意を引きます。
Cの母「○○くん。また今度来るから、今日は帰ろう。」
子Cは高いところが平気なので、ジャングルジムの一番上まで登りつめました。Cの母は手を引くこともできず、説得するしかありません。ここで、慣れているCの母は言いました。
Cの母「どらえもんがはじまるよ。早く帰らないと見れなくなるよ」
子Cはすぐには動きません。
Cの母「いいの?どらえもんは見ないの?」
このあたりで突然子Cはジャングルジムを降りて、何もなかったように家へ向かって歩き始めます。
子C 「おかあさん。どらえもん、見る。」
 こんなふうにうまくいけばいいのですが、いつもそうはいきません。子Cも母とのやりとりに譲歩したというよりも、どらえもんを見ようとしただけのようです。
 お互いの事情を理解し、譲歩し合うのが難しい場合は、上記のようにその子が納得できるような事柄を見つけて持っておくことも必要でしょう。
 どらえもんのような切り札を持っていると、いいタイミングで使うことによって、しかることもなく、すんなりと動いてくれるのですが、先ほどのジャングルジムの一番上までのぼった段階で、納得できる理由がない時は大変です。
子Cがジャングルジムの一番上にいる。
Cの母「帰りますよ。おりてきて。」
子Cに声は届いていてもまったく聞こえた様子がありません。
子Cがテレビで聞き覚えたような言葉をくり返し言い始めました。
Cの母はなんとかおろそうと言葉で誘いますが、子Cはまったく動きません。
周りの子どもたちが、どうしたのかと見ていますが、また自分たちの遊びに戻ります。
母は困ってしまい、しばらく黙って待っていると、子Cは突然何か思いついたようにジャングルジムをおりたかと思うと、帰り始めました。
 このようなケースは、子CがCの母の言っていることに歩み寄ろうという気持がなく、また周りの人が自分をどう思うかということも考えていません。これは子Cがコミュニケーション力が低いために、人の気持を推察できないからです。無視してやろうとか人の遊びを邪魔してやろうといった悪意はありません。ただ人の思いがよくわからないので、自分の考えの通りに行動しているだけなのです。
 この状況を改善するには、2つの方向から考えていくことになります。1つは自閉スペクトラム症のコミュニケーション力を向上させることであり、もう1つは周りの人のコミュニケーション力を向上させることです。
 一般的には自閉スペクトラム症に問題があると一方的に考えるために、飛躍的な問題解決はありません。自閉スペクトラム症たちはコミュニケーション力が低いがゆえに問題をかかえているのですから、一方的にその人達に歩み寄れと要求しても近づくことはできないということです。一番改善しなければならないのは、高いコミュニケーション力を持つ健常者が、自閉スペクトラム症たちの考えを理解し、歩み寄ることだといえるでしょう。
冷静によく観察し、自閉スペクトラム症を正しく理解しましょう。一人ひとりが違う個性を持った人間ですから、それぞれを尊重しましょう。
言葉は短く、分かりやすく。質問するときは「食べる?」よりも「食べますか?」のように語尾の変化で質問であることが分かるように。「どのくらいやった?」のように曖昧な質問ではなく「30分やりましたか?」というように具体的に。
声は小さい方が注意を引きます。自閉スペクトラム症は振り返らないことが多いので、周囲の人はだんだん声が大きくなりますが、静かな所で静かに語りかけるようにしていけば、小さな声に敏感に反応してくれるようになります。自閉スペクトラム症が人の問いかけに振り返らないのは、コミュニケーション力が低いだけでなく、問いかける人の声が大きすぎることも原因の一つです。音に敏感な自閉スペクトラム症は大きすぎる音に自分を閉ざすということです。
また言葉だけがコミュニケーションではありません。目と目があっただけでも分かればよいのです。その場の空気を感じあえるような関係になりたいものです。健常者みんながその力を持てば、いつの日かきっと自閉症という言葉がなくなる日がくるでしょう。

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